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IJET25で印象に残ったセッション

 前エントリー「IJET25に参加して(全体的な感想)」にも書いたように、今回のIJETでは全部で8つの講演・セッションに参加しました。どれも興味深くすばらしい内容のものばかりでしたが、その中でも特に印象に残った3つの講演・セッションについて書きたいと思います。

(1) 基調講演「村岡花子-『赤毛のアン』翻訳に託した未来への希望」 by 村岡 恵理

 現在放映されているNHKの連続テレビ小説『花子とアン』の原作者である村岡 恵理さんによる講演でした。『花子とアン』は、第1回から欠かさず観ているので、とても興味深く聴講しました。ドラマ化の裏話や安東花さんと村岡花子さんの相違点(もちろんドラマで描かれる花(子)さんが実際とは大きく異ることは、いろんな人の話を聞いて知っていましが)に関する話は、「へえ~」の連続でした。

 特に印象深かったことは、花子さんは日本語の勉強機会を渇望していたこと、そして短歌の世界に身を投じ、歌人として生きようとしていた時期があったということでした。ドラマでは、花子さんの英語力が優れていたことは描かれてるが、彼女の日本語に対する取り組みはまったく描かれていないとのこと。翻訳とは英語さえできればできる仕事だと世の中の人が勘違いしても仕方ないですね。そして、花子さんは、短歌を通じて日本語の感性やことばを選ぶ感覚を磨いていったという話を聞いて、俳句を趣味としている自分としては、心の中で「へえ」ボタンを押しまくりでした。今回の村岡さんの講演を聴いて原作の『アンのゆりかご』と村岡花子さん訳の『赤毛のアン』が猛烈に読みたくなり、早速購入しました。


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(2) さらば「日本語が透けて見える英語」!by 遠田和子

 以前から一度受講していみたいと思っていた遠田先生の英訳セッションがあったので、迷わず受講することにしました。課題が7問出ていたので、ちゃんと事前に英訳を作成し前日に提出しました。ある程度の自信はあったのですが、遠田先生の簡潔な訳例を見て愕然。自分の訳文はまだまだ冗長だと自覚した次第です。また、参加者からの提案訳もすばらしく、「ほ~。そういう発想があったか」と感心することしきりでした。「こうでないといけません」といった上から目線のセッションではなく、和気あいあいと楽しい雰囲気で2時間があっという間に過ぎていきました。翻訳と離れて、再度簡潔な英文の書き方を基礎から勉強し直してみようと思いました。英文ライティングを勉強するための参考書としては、『Style toward Clarity and Grace』がお勧めだそうです。


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(3) 字幕の現場はレ・ミゼラブル!?~石田泰子氏が語る映画翻訳の世界 by 石田泰子

 これまで、映像翻訳とか字幕翻訳に関連するセッションには参加したことがなかったのですが、一度こういう世界を覗いてみたくなり、参加することにしました。石田泰子さんは、28年の経験を有する字幕翻訳の大ベテランで、代表作は『レ・ミゼラブル』などだそうです(申し訳ありません。まったく存じ上げておりませんでした。)。セッションは、インタビュアーの仙野さんの質問に石田さんが答えるという形で進められました。字幕翻訳者(家?)になったきっかけや字幕翻訳の大変な点など、未知の世界の話はとても興味深いもので、オーディエンスの笑い声が絶えないとても楽しいセッションでした(仙野さんのインタビューがとても上手だと思いました)。産業翻訳とはかけ離れた世界なので、明日からの仕事にすぐに役立つという話はなかったかもしれませんが、どんな分野であれ、一流の人の話をその場で聴くことはとても刺激になります。このセッションを選んで大正解でした。

 そのほかに参加したセッションもどれもすばらしかったのですが、すべてを紹介していたらきりがないので、特に印象に残った3つの講演・セッションのみを紹介させていただきました。講演者・スピーカーのみなさん、ありがとうございました。有意義な時間を過ごすことができました。


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